旅先での自己責任
休暇をとりバチカン市国を訪れたときの話です。
バチカン美術館はいつも混んでいるというので、事前に予約しチケットを持参しました。長蛇の列に並ぶこともなく、入口へと続く予約者用の道を進んでいくと、所々にIDカードをさげた男性が立っています。
「チケットを見せてくれ。スタッフだ」というので予約票を見せると、「このチケットじゃ全部の施設には入場できないよ。美術館、礼拝堂には入られるけど、大聖堂には行けない。あと21ユーロ出せば全部OKだよ」と言います。私は「美術館と礼拝堂だけでいい。このチケットはそのためのチケットでしょう?大聖堂へは今日は行かないから必要ない」そう答えますが、「だめだ。これじゃ全部まわれないんだよ」とその繰り返し。次第に互いの声が大きくなって喧嘩のようになり、最後は「あんたに何を言っても分からん」と男性は別の人の方へ去っていきました。
(厄介だったな~)と思いながら、(あれ、大聖堂はそもそも入場無料だ……)と気がつきました。
実は彼らは美術館関係者ではなく、とある旅行会社のスタッフのようです。彼らについていくと、一種のバチカンツアーのようなチケットを買う羽目になり、その内容はたいして充実していないらしいことや「詐欺だ」と苦情が寄せられていることをその後知りました。
世界各国からの観光客が集う場所で、こんな胡散臭いビジネスを許していていいの?と思いますが、どうやら自己責任ということのようです。「損した!」、「騙された」とバチカン関係者に文句をいったところで、とりあってもらえないようです。
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