「春」だからといって
春を別れと出会いの季節というのは嫌いです。ご都合主義な風潮だと感じてしまいます。
皮肉っぽい見方をするのには、自分が転校生として過ごし、春じゃなくたって別れも出会いもある、と小さい頃から思ってきたことも関係するかもしれません。
別れは突然訪れることもあります。悪い予感が現実となることもあります。
「あの震災から5年」経ちました。
時間の区切りでみつめるべき事柄もありますが、大切なものを失う悲しさは時間で区切ることはできません。昼も夜も、季節も年数も、時間なんてものは作用せず、悲しみに出会ったら別れることはできません。
それを背負ったり抱えていることが辛いときは、おんぶやだっこをしているんだと言いかえて、あやしながら生きていくほかありません。
【S】
人生の主人公
金曜日の夜にHBCで「わたしを離さないで」というドラマが放映されています。移植臓器摘出用にクローン人間が「飼育」され「解体」されることが公認されている世界に生きるクローンの主人公という設定です。そんな設定ですから、視聴率が低迷するのも無理からぬヘビーなドラマで、私も心に余裕のあるときでないと見る気にならず、気が向いたときに録画したものを見ています。
少し前の回で、主人公の友人はそのような未来に向けて「飼育」されることを拒み、自ら命を絶ちました。その友人は「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と書いたメモを持ち歩いていました。最期の時も。これは日本国憲法第13条を書き写したものでした。
ドラマの世界では、主人公たちは人間として扱われていないため、個人として尊重されることもなく幸福を追求することもできないわけですが、現実世界では、皆が個人として尊重されねばならない、と憲法は宣言しています。それぞれが自分の人生の主人公なのです。9条などに比べて知名度は低いのですが、憲法の価値観を体現したともいえる条文です。大切にしていきたいものです。【T】