公園通り雑記帳

深い闇

   

4月は官庁の異動期で、仕事柄、裁判官の異動記事はチェックします。記事を見ていく中で、私は凍りつきました。ある裁判官の左遷人事が載っていたからです。能力人格に問題があるような人ではありません。その原因として思い当たるのは、やはり、2年前に3件もの無罪判決を出したこと。

その3件目の無罪判決は、私が弁護人を務めた事件で、勇気をもって正しい判断をする立派な裁判官だと思いましたが、同時に、ここまでやると懲罰人事を受けるのではないかと気になっていました。そして恐れていたことが起きましたが、ここまでやるとは‥。

というのは、ひと昔前の冷戦期には、国を敗訴させるとか無罪などの国家権力を厳しくチェックする判決を出すと、国家権力に気を遣う最高裁の司法官僚ににらまれて冷や飯を食わされると言われており、実際そのような目にあった裁判官も少なくありませんでした。しかし、最近はそのような統制は緩んできていると言われていたのです。しかし、今回、まざまざとこのようなことを見せつけられて暗澹たる気分になりました。

たぶん、その裁判官も、無罪判決を多数出すとこのような目に遭うかもしれないということは頭をよぎっていたのではと思います。冤罪が後を絶たない理由の一つは、裁判官は決して認めませんが、心のうちに無罪を出すことへの恐れがあるからだと思います。

しかし、彼は、それでも事実と法律と自分の良心のみに従って判決を下しました。そのような裁判官がいるということは希望を見いだせるところではありますが、それに対する最高裁の仕打ちを見ると闇は深いというしかありません。【T】

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